茨城大学 理工学研究科(工学野) 物質科学工学科 助教
研究キーワード:ナノテク・材料/無機物質・無機材料化学/光触媒
小中学校時代は学校の先生になりたいと思っていました。先生になって学生の活躍を見たいと思っていたのですが、中学校の先生にその話をした際に「あなた自身が活躍しなさい」と言われました。他の人が活躍することを考え、自分が活躍することを考えていないことに気づきました。自分が活躍するならと考えた時に、なるべく多くの人の役に立つようなことがしたいと思いました。通っていた小学校が環境問題に関して意識の高い学校だったこともあり、自然と環境問題を解決したいと思ったことが、研究者の道の始まりでした。
私の研究領域は「光触媒」です。この研究領域を選んだのは高校生の時に見た水で動く車のニュースがきっかけです。なぜ車が水で動くかを調べた中で、光触媒というワードを知り、もっと深く知りたいと思い、学べる大学を探していきました。
光触媒は太陽光などの光エネルギーを当てると、酸化反応と還元反応を起こすことができる材料です。光エネルギーで水を水素と酸素に分解して、得られる水素はクリーンエネルギーとして注目されています。直近は廃棄物を酸化して有用な分子に変換しながら、水を還元して水素を製造するといったエネルギー・環境問題の解決を目指した研究を行っています。
東京理科大学在学時に所属していた研究室は光触媒がメインの研究テーマではありませんでした。しかし、研究室の先生が自由に研究をしていいという方針だったこともあり、自身で環境構築をしながら研究ができました。最初は環境を整えるのに苦労しましたが、他の研究グループとの共同研究や、学会での情報収集をする中で、試行錯誤しながら研究を進めていきました。
大前提として、研究が「好き」であることだと思います。長時間研究をやることが正義ではないですが、時間を惜しまず、考え続ける事が出来るほど好きだということが続けていく上での原動力になります。プライベートでもつい研究につながる面白いことはないかなと考えてしまいます。
始めは応用研究に興味を持ち、光触媒に光を当てて水素が泡として出てくるのを見ているだけで、面白さを感じていました。その後、どんどん研究を突き詰めていくと基礎的な部分で未解明の部分がまだまだあり、その予想外の発見があると気づき、基礎研究にも興味を持ちました。応用研究から基礎研究まで、幅広く興味が持てたということが、研究が「好き」ということが続いた要因かもしれません。
それぞれの環境下で「できないことではなく」、「できること」を考える事が大切だと思います。例えば先生が放任主義だから指導してもらえない、逆に干渉する先生だから自由に研究ができないと、できない理由を探して不満を言ってやらないのではなく、行動に移すことです。放任主義の先生の下なら自由に研究ができるし、干渉主義の先生の下ならその先生のスタンスを模倣できたり、先生を納得させる力をつけられるかもしれません。置かれている環境は異なるかもしれませんが、結局自身の捉え方次第で、きっとそれぞれに良さはあります。どんな環境下でも自分の力を伸ばすことが出来るという思考を持つことが大切だと考えています。
また、研究テーマは複数持った方が良いと思っています。いくつか、結果が出やすいテーマとチャレンジングなテーマを並列で行うと、アウトプットをコントロールできますし、発想に幅が生まれます。後に独立した際にも多様な経験が役立つと考えています。一方が忙しくて、他の事なんてできないと今は感じているかもしれませんが、ぜひチャレンジしてみてください。