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アカデミア研究者の仕事とは?博士学生が知っておくべき3つのこと

研究者の一日と聞いてどんなイメージを持ちますか?講義以外は自由に仕事しているイメージでしょうか?あるいは、一日中研究室にこもって実験をしているイメージでしょうか?中高生時代の私は、研究者というのは365日24時間ずっと研究のことばかり考えていて、実験の結果に一喜一憂しているのだと漠然と想像していました。しかし、実際に自分が研究者として生活を送ってみると、実験に没頭するのがその全てではないことに身をもって気付かされました。今回の記事では、アカデミア研究者である私のとある一日をご紹介します。博士学生の皆さんが今後のキャリアを選択する参考になれば幸いです。

まずは定番、「講義と実習」

1つ目は皆さんもご存知の「学生への講義および実習」です。教員は学生の理解や興味を深めるために、講義スライドや実習課題を魅力的にしようと、かなりの時間をかけて準備をします。皆さんの中には、講義スライドなんて同じものを使い回しているだけだろうと思っている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。実際には、教員自身が「次回はこの部分を修正しよう」とか「時事ネタに絡めてこの話題を出したらおもしろそう」といった振り返りやアイデアを反映させて、スライドをアップデートしていくのです。近年は「アクティブラーニング」の考え方が大学でも導入されてきており、教壇に立ってスライドを流すだけというスタイルから、学生にも積極的に授業に参加してもらえるような形に徐々に変わりつつあります。 こういった変化に対応していくのも大切な仕事の一環です。

自分とみんなのために!「助成金の申請」

2つ目は「助成金の申請書の作成」です。研究費がなければ十分な研究を続けることは当然難しくなります。研究を続けていくためには、科研費やAMED、民間助成金へ申請書を作成することが必須になります。幸運にも採択された助成金については、年度ごとあるいは研究期間終了時に詳細な報告書の提出や評価委員の前での成果報告会というプレゼンテーションが求められます。ここでの頑張り次第で、テーマが継続するか、中断を余儀なくされるかが決まります。皆さんが安心して研究を行う為に、皆さんのボスは申請書の作成やステークホルダーとの意見交換・情報収集など陰ながら奮闘しています。当然、複数の申請書を作成することになりますので、必然的に毎日何らかの締め切りに追われ続けることになります。スケジュール管理、タスク管理が大変重要です。

なんとなくわかった気になっていませんか?「大学の運営に関する仕事」

3つ目は「大学の運営に関する仕事」です。例えば、皆さんが研究を行う際に必ず提出する倫理委員会への申請書や、組換えDNA実験および動物実験の計画書の審査、研究施設の管理・運営など、研究機関としての運営のみならず、教育機関としての大学の運営など非常に多くの仕事があります。ここだけ聞くと、「なんだか面倒だな」と思うかもしれませんが、組織の運営に携わることで、どうしてその規則が必要なのか、あるいは自分の所属する組織は10年後20年後にどういった未来を見据えているのか、といった大学の仕組みや方針を知ることができます。ためしに、自身の所属する施設の学長あいさつや研究課長挨拶のWEBページを開いてみてください。どこの施設でも、情熱あふれる決意表明をたくさん見ることができますよ。

学生の皆さんが今からできること

最後に、アカデミアポストを目指す皆さんに向けて、学生の期間中にもっと磨いておけば良かったなと私が思うことを上げていこうと思います。それは締め切りを守る習慣であったり、タスク管理の方法であったり、慣れないことでも戸惑わないための心の持ちようであったりです。皆さんすでにお気づきだと思いますが、これらのスキルは皆さんが研究活動を行う中で培った、あるいはこれから博士論文を作成していく中で習得していく中で必要となってくる、ありとあらゆる事柄の中に詰まっています。つまり、今あなたの目の前にあるテーマに真摯に取り組む姿勢が、いつかアカデミアで活動しているときに思わぬところで活かされることとなります。

おわりに。アカデミア研究者としてのバイタリティを育てよう!

今回はアカデミアポストを目指す博士学生の皆さんに向けて、アカデミア研究者が研究活動以外にどんな仕事をしているのかを3つ紹介してみました。アカデミアの教員たちはこうした日々の忙しさの合間を縫って、学生の皆さんに指導を行っています。「以前に言ったことを覚えてくれていない」「毎回同じことを聞かれる」など、指導教員に対して不満を抱いている学生さんもいるかもしれませんが、皆さんが想像する以上に仕事を抱えているのがアカデミア研究者です。ましてや、教授として研究室を運営する研究者は、多忙を極めながら研究も指導もこなす”スーパーマン”です。博士学生の皆さんも教員たちの秘めたバイタリティに負けずに、研究に集中できる今を楽しみつつ、将来アカデミアの世界で生き抜く力を育てていってください。

この記事の著者

藤岡 正喜 / Masaki Fujioka

大阪公立大学大学院 医学研究科 特任講師

この記事の編集

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