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Science Topics

【環境】進み続ける地球温暖化と人類にもたらされる悲劇

二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出によって引き起こされる地球温暖化は、地球上の生態系を脅かす重大な問題です。日本を含め世界各国では、酷暑や洪水など頻発する異常気象が報道されています。しかしながら、近ごろ地球温暖化に関する話題は以前よりも鳴りを潜めているように感じます。地球温暖化を解決するには世界規模のアプローチが必要であり、専門家ではない多くの人にとっては遠い話にしか思えないでしょう。しかしながら、地球温暖化は刻一刻と進んでおり、人間の生活にもさらなる悪影響が及ぶ可能性があります。本記事では、「地球温暖化」というトピックに焦点をあて、これから起こりうる危機について見ていきます。

地球温暖化の現状

大気中に含まれる二酸化炭素のような温室効果ガスは、適量であれば地球表面を温め、生命環境を維持するのに多大なる貢献をします。大気のない太陽系の惑星の温度変化が激しいことを考えると、温室効果ガスの重要さが分かるでしょう。しかしながら、産業革命以来の大規模な工業化により、大気中に排出される温室効果ガス量が増え続けた結果、私たちはほとんど後戻りができないところまで歩みを進めてしまいました。

実際に、2023年時点で主要な温室効果ガスの大気中濃度は史上最高値に達してました。同時に2023年は産業革命以前の水準を1.5℃も上回る地球平均気温が9月中旬までに38日間も記録されました。地球温暖化が原因と考えられる異常気象も各地で観測され、ヨーロッパや北アフリカでは熱波が、カナダでは過去に例を見ない大規模な山火事が発生し、多くの人々が命を落としました(1)。このように、地球温暖化は着実に世界を蝕みつつあります。

溶けゆく南極の氷棚

南極大陸は雪と氷に包まれた極寒の大陸です。この大陸は、分厚い氷によって覆われており、その氷の厚さは最も厚いところで約4500mにも達します。多くの人が知っているとおり、この氷が全て溶けると海面が60mほど上昇し、ツバルのような島国のみならず、ニューヨークのような大都市も海の下に沈むことになります。このような世紀末的な出来事がすぐに発生することはありませんが、南極の氷が徐々に溶けていることは事実です。

南極の氷の融解の指標とされているのが、氷棚(ひょうほう)の面積です。南極大陸の周辺には、大陸を覆う氷の重さによって押し出された氷が洋上に浮いています。これを氷棚と呼びます。氷棚は海水温度の上昇によって年々融解速度が増しており、その面積も急速な減少傾向にあります(2)。その影響もあり、1901年から2010年の間に約19cmの海面上昇が生じており、2006年以降に至っては1年間に約3.6mmと、20世紀における海面上昇速度と比べて約2.5倍のスピードになっています。

豪雨と氷河が起こす大規模な洪水

記録的な気温の上昇により海から蒸発した異常な量の水蒸気は、より激しい雨となって人びとの生活を脅かしています。たとえば、2022年にはオーストラリア、南アフリカ、ブラジルの3国で記録的な豪雨があり、引き起こされた洪水によって多くの人々が犠牲になりました。これらの事象は数か月以内に立て続けに起きています(3)

豪雨による洪水に加えて山間部の氷河の融解によって引き起こされる洪水も脅威です。氷河の作用によって陸地が削られた出来た窪地に水がたまることで氷河湖が自然に形成されます。氷河湖の水は氷河によって堰き止められていることが多く、この氷河が融解するとふもとの人間居住地に甚大な洪水被害が及ぶことが予測されます。このような洪水を氷河湖決壊洪水(Glacial Lake Outburst Floods; GLOFs)といいます(4)。

尋常でない熱波

地球温暖化による気温上昇が最も直接的な形で現れるのが熱波でしょう。熱波の発生要因は複数ありますが、最も大きなものは高気圧の停滞です。高気圧は地上の空気を圧縮するため気温が上昇します。さらに発生した下降気流が雲の発生を抑制するため、日射が地上をさらに温めます。特に都市部では道路のアスファルトや建物が熱を吸収することでヒートアイランド現象が起こり、状況を悪化させます。

2021年にカナダと米国を襲った熱波は、広範囲で甚大な被害をもたらしました。例えば、カナダのブリティッシュコロンビア州のリットン村では49.6℃という暑さを記録し、それによって発生した山火事が町の大部分を消失させました。この事例以外にも世界各地で熱波による被害が相次いでおり、事態が深刻化しています(5)

おわりに

現在各国は地球温暖化の鎮静化に向けて、二酸化炭素排出量の削減などの取り組みに力を入れ始めています。しかしながら、こうした取組みに対して積極的な姿勢を見せる先進国に対し、経済成長の鈍化を危惧した途上国がそれに反発するなど、先進国と途上国の間で意見の食い違いが見られています。はたして人類は、このような国同士の対立を乗り越えて地球規模の問題を解決することができるのか、今後の動向に目が離せません。

参考文献

この記事の作成・編集

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