将来の雇用について考えるのは当然のことだと感じるかもしれませんが、適切な備えができている博士課程の学生はどれほどいるでしょうか。
毎日実験や解析に追われていたり、研究生活がルーチン化している学生ほど陥りやすいことですが、自身のキャリアについて深く考えず、準備がままならないうちに「気づけば就活が始まっていた」「学振PDの締め切りが目前だった」などという岐路に立たされていることがあります。そのような事態を避けるために、この記事では、博士学生が今すぐ取り組むべき3つの備えを紹介します。
博士学生がキャリア形成に備えるべき理由
現時点で将来どんなキャリアを築きたいかを明確にするのが難しい方も多いでしょう。しかしそんな方にこそ、この記事は役に立つのではないかと思っています。なぜなら、この記事で触れる「キャリアへの備え」とは、学問を続けるか他のキャリアを探るかにかかわらず、競争の激しい研究の世界で生き抜くために必要な備えのことだからです。
博士課程の学生がキャリア形成に備える目的は、単に学術的な探求を超えた、より広い社会的な要請に応えられるようにすることにあります。大学院での研究は、確かに深い専門知識を養います。しかし、この知識だけが全てではありません。アカデミアであれ産業界であれ、研究者として生き抜いていくには、学問の壁を越え、チームワーク、プロジェクト管理、さらにはリーダーシップといった、一見して研究とは無縁な能力が求められるのです。
備え1:他の研究者とつながる
博士課程の学生にとって、他の研究者とのネットワーク構築は、単なる交流を超えた深い意味を持つ営みの一つです。大学院での日々は、同じ研究室の学生や教授との対話の機会に溢れています。しかし、真に研究者として成長したりキャリア形成のためのアドバンテージを掴むためには、研究室の壁を越えた交流が不可欠です。
外部の研究者とのつながりは、新たな視点や刺激をもたらします。異なる専門分野の研究者との対話は、自身の研究に新しい光を当て、未探索の領域へと導くことがあります。また、異分野間のコラボレーションは、予期せぬ革新的なアイデアを生み出す可能性を秘めています。これは、研究の深化だけでなく、新たな研究テーマの発見にもつながるでしょう。
さらに、このネットワークの構築はキャリア形成においても重要な役割を果たします。学術界のみならず、産業界とのつながりは、就職活動やキャリア選択の幅を広げます。特に博士課程の学生にとっては、研究職だけでなく、コンサルタントや起業家としての道も開かれることになります。
このように、他の研究者とのネットワーク構築は、博士課程の学生にとって、知識の深化、視野の拡大、そして将来のキャリアパスを豊かにするための重要な備えです。自らの研究を世界に広げ、多様なキャリアの可能性を探求する旅の始まりと言えるでしょう。
備え2:汗用性の高いスキルを身につける
博士課程の学生にとって、汎用性の高いスキルを身につけることは、専門的な研究領域を超えた広いキャリアの地平を切り開くための重要なステップです。これらのスキルは、研究の枠を越え、常に変化し続ける職場環境に対応し、独自のポジションを築き上げる成功の鍵となります。
データ分析、プログラミング、プレゼンテーション能力は、今日の職場で求められる代表的な汎用スキルです。データ分析能力、つまり膨大な情報の海から有益な洞察を引き出す力は、科学的な研究だけでなく、ビジネスの意思決定や日常生活においても役立ちます。
プログラミングスキルは現代社会におけるデジタル化の波に対応するために不可欠です。コンピューター言語を理解し、それを使いこなすことは、研究の自動化、データ処理、さらには新しい技術の開発に直接貢献します。また、プレゼンテーション能力は、自らのアイデアや研究成果を効果的に伝え、他者を納得させるために重要です。これは、学術会議の発表からビジネスミーティング、教育活動に至るまで、幅広い場面での成功に直結します。
これらのスキルは、博士課程の学生がアカデミア、産業界を問わず世界のあらゆる場面で活躍するための基盤となるでしょう。汎用性の高いスキルの習得は、博士課程の学生が将来のキャリア形成に向けて取り組むべき、不可欠な備えの一つです。
備え3:企業と関わりを持つ
博士課程の学生が企業と関わりを持つことは、研究の深みを増すだけでなく、将来のキャリアパスを多様化させる重要な備えです。研究に没頭する日々の中で、産業界との接点を持つことは容易ではありませんが、その価値は計り知れません。
企業と関わることで、博士学生は実際にビジネスの場で働いている研究者とつながることができます。また、インターンシップや副業の機会に巡り会えれば、理論だけでは得られない実践的な知識とスキルを身につけることができます。自身がアカデミアと産業界のどちらで研究を続けていくのかを決断する上で、この経験は重要な判断材料となるでしょう。
また、研究成果を現実のビジネスや社会問題に応用する経験ができれば、自身が将来アカデミアで研究を続けた場合に、取り組んでいる研究課題を産業界のニーズと結びつけるための視座を得ることも叶うでしょう。もちろん、産業界で研究者ビジネスのシーズを探索する上でも、この経験は決して無駄にはなりません。
このように、企業との関わりを持つことは、博士課程の学生にとって、学術研究の枠を超えたキャリア形成のための重要なステップです。実践的なビジネス経験を通じて、自らの研究を社会に応用するという視点を養い、より広い洞察を持ってキャリア形成を再考することができるようになるのです。
おわりに
博士課程の学生がキャリア形成に備えて行うべきことは、専門的な研究の深化だけではありません。キャリアパスを広げる旅路において、他の研究者とのネットワーク構築、汎用性の高いスキルの習得、そして企業との関わりを持つことは、博士学生が自らの可能性を最大限に引き出すための重要なステップとなります。
また、博士学生にとってこれらの備えは、単なるキャリア形成の手段に留まりません。自分の研究を世界に向けてより広く展開し、社会に貢献するための視座を養う基盤となるでしょう。積み上げたものは将来の選択肢を大きく広げ、自らの夢を実現するための強力な味方となります。ぜひこの機会にキャリア形成に向けて動き出してみてはいかがでしょうか。
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