【人工知能】進化し続ける AIと人間の共存を考える

2024年7月9日

人工知能（AI）という言葉は、今では日常のいたるところで耳にする言葉となりました。特に人間と自然な会話ができるChatGPTの登場以降、AIの存在感は日に日に増しているように感じます。AIの急速な発展に伴い、社会にはその進化を推進する潮流と、抑制しようとする潮流の両方が混在しています。果たしてAIは私たち人間にどのような影響をもたらしているのでしょうか？本記事では、AIと人間のかかわりについて、その歴史や現代社会での活用事例を紹介し、今後どのように付き合っていくべきかを考察します。

AI技術の歴史
現代社会におけるAIの活用事例
AIは完璧ではない
近未来社会におけるAIと人間のかかわり
おわりに

AI技術の歴史

AIの歴史は1950年代に始まりました。当時は、専門家が決めたルールに従ってコンピュータが動くだけの単純な仕組みであり、1970年代になると、数学的な方法が使われはじめ、言葉を理解する技術（自然言語処理）やコンピュータ自身が自分で学ぶ技術（機械学習）が進化していきました。

そして2012年以降、機械学習のなかでもディープラーニングという手法が急速に発展します。近年では米国のビッグテック企業を中心としたAI開発競争が激化し、AI技術は飛躍的に進化し続けています。実際に、自然な会話を理解できるChatGPTのような技術や、スマートフォンに搭載されている顔認証装置などが普及し、私たちの生活と切っても切り離せないものになっています。（1）

現代社会におけるAIの活用事例

AIはすでに現代社会の営みに幅広く取り入れられています。特に、工場の自動化や医療分野での診断支援など、大量のタスクや情報を扱う業務の効率化に大きく貢献しています。

さらに、新しい物質の合成経路の発見等にAIを用いるマテリアルズインフォマティクスやケモインフォマティクスの分野も発展しており、科学的発見を早め、医学研究にも大きな進展をもたらしています。（2・4・5）実際にマテリアルズインフォマティクスの成功例について見てみましょう。韓国のサムスン電子は米国マサチューセッツ工科大学と共同で行った次世代型全固体リチウムイオン電池の開発にAIを応用し、わずか1年で開発に成功しました。一方で、経験と知識に依拠した従来の手法で同じ電池の開発を行っていた日本のトヨタは開発に5年もの年月を要しました。(6)

AIは完璧ではない

AIは大量の情報に基づいて最も確からしい答えを導き出しますが、必ずしも「人間社会の倫理観に基づいた適切な判断」を下すわけではありません。AIの活用が問題になった事例を紹介しましょう。米国のアマゾンは2014年から新入社員の採用にAIを導入しました。しかしながら、女性よりも男性を高く評価してしまうという問題があることが後に発覚しました。これは、AIが男性の多かった過去の採用実績を学習したことが原因です。これを受けて、AmazonはAIを活用した社員採用を2017年に中止しました。(7)

こうした問題を防ぐために、AIモデルを定期的に監視して評価したり、説明可能なAI（Explainable AI, XAI）を開発し、判断の根拠を明確にしてエラー処理が簡便になるような枠組みを整えたりすることが効果的です。さらに、倫理的ガイドラインを遵守し、公平で偏りのないAIを設計・運用することも必要です。こうした対策を講じることで、AIの精度と信頼性を向上させ、誤った判断のリスクを最小限に抑える努力が人間には求められているのです。(3)

近未来社会におけるAIと人間のかかわり

いまや私たちの生活の一部となったAI。その進化のスピードには目を見張るばかりです。しかしながら、はたして人間社会はそのスピードについてきているでしょうか？AIは確かに素晴らしい存在であり、私たちに多くの恩恵を与えてくれるものの、AIに盲目的に依存することは正しい姿勢とはいえません。AIが社会生活を劇的に変えようとしているこの時代、そしてその時代を生きる私たちこそが、今後のAIと人間の趨勢を決めるといっても過言ではありません。今後もAIの動向に注目していきましょう。