本記事は、研究者向けプラットフォーム「CoA Nexus」が独自に実施したアンケート調査に基づき、「良い研究室」として推薦された研究室を紹介する特集です。
第一弾として、注目の半導体関連の研究所の中から、高い評価を得た4つの研究室をご紹介します。最先端の半導体研究を推進しながら、研究者一人ひとりの成長とキャリア形成を支える環境を整えている点が共通しています。
近年、半導体業界は世界的に注目を集めており、AIや自動運転、5G通信、量子コンピューティングなどの急成長分野を支える基盤技術として、その重要性が一層高まっています。各国で国家戦略として研究・生産体制の強化が進められており、日本国内においても大学・研究機関と産業界の連携による先端研究の推進が加速しています。
今回のアンケートでは、以下の7つの観点から研究室の実態をヒアリング・評価し、現・元所属者から高い評価を得た研究室をピックアップしました。
アンケート評価項目:
研究環境・設備
- 資源/リソース
人間関係・カルチャー
指導体制
研究の自由度とキャリア裁量
ライフ・ワークバランス
研究室での成長実感・相談しやすさ
琉球大学工学部|千住研究室
千住研究室では、再生可能エネルギーの高度利用とエネルギーマネジメント技術の開発を通じて、次世代の電力・エネルギーシステムの実現を目指しています。特に、離島や小規模地域における分散型エネルギーシステムの最適制御に注力しており、技術的な研究に加えて、社会実装や地域課題の解決を意識したアプローチが特徴です。
研究室の特徴
学際的アプローチ:
制御工学・情報工学・材料科学・環境政策など複数分野との融合的な研究を展開。- 産官学連携:
沖縄電力、国内外の大学、自治体等と共同プロジェクト多数。 地域社会との接続:
災害時のレジリエントな電源確保に向けたシステム提案など、沖縄の地域課題にも直接貢献。
アンケート結果(抜粋)
「とても雰囲気が良く、メンバー同士で気軽に意見を言い合ったり、相談したりできる環境です。研究テーマも幅広く、自分の興味に合わせていろいろな分野に挑戦できるのが魅力だと思います。先生方も自主性を大事にしてくださるので、研究だけでなく、将来の進路や日常生活のことまで親身に相談に乗ってもらえます。」
西日本工業大学工学部|松田研究室
松田教授は、次世代エネルギー制御や半導体技術を活用した環境・製造応用を中心に、実践的な研究を進めています。特に、モデルベース設計(MBD)を用いたFPGAによるガスモニタリングシステムや、センサーを用いたCO₂吸収量の測定など、IoTや組込み技術と深く結びついた研究が特徴です。社会や産業への直接的な貢献を見据え、教育と研究の両面で実践力を重視した環境です。
研究室の特徴
IoT・センサ技術の実装力:
モデルベース設計技法を用いたFPGAによるガス検知システムなど、実務に近い技術実装が行われている。多様なセンサ応用:
CO₂吸収量の測定や音響によるガス漏洩検知技術など、実用的なセンサ応用研究が進行。産業との接続と教育融合:
パナソニックでの経験や多数の学会活動を通じて、産業界との連携と学生教育の両立を図っている。
アンケート結果(抜粋)
「自主性を尊重してもらえる雰囲気があり、比較的自由に研究を進めることができます。若手でも意見を出しやすく、上下関係もあまり感じません。企業の技術者の方が定期的に来られる機会もあり、実践的な視点での学びも得られています。」
九州大学大学院 システム情報科学研究院|荒川研究室
荒川研究室は、人と調和する未来社会を目指し、IoTセンサーと機械学習技術を融合させたユビキタス/サイバーフィジカルシステムの構築を進めています。行動認識や心理状態の推定、さらには行動変容支援のためのシステム開発に取り組んでおり、企業との共同研究や社会実装も活発です。
研究室の特徴
高度なセンサー応用と行動認識力:
IoTやウェアラブルセンサーを活用し、人の行動や感情状態のモニタリング・変容支援に強みあり。ユビキタスかつ実装志向の研究展開:
センサ開発からAI・ネットワーク・アプリまで一貫して扱い、「人に優しい」統合システムの構築を目指す。産学連携と国際活動:
NTTドコモ、KDDI、ソニー等との実証研究を通じて産業応用に近い成果を追求。
アンケート結果(抜粋)
「研究テーマの自由度が高く、自分の興味や関心に合わせて主体的に研究を進めることができます。自主性が尊重されていて、独立した研究にも取り組みやすい環境だと感じます。進路に関しても、博士後のキャリア支援が手厚く、アカデミアだけでなく企業や海外機関とのネットワークも紹介してもらえるのが心強いです。」
静岡大学電子工学研究所
静岡大学電子工学研究所は、高度な光・電磁波技術を核とし、半導体デバイスやセンシング技術、バイオ・ナノマテリアルなどの先端領域に取り組む研究拠点です。テレビ研究の源流を持つ歴史ある研究所でありながら、現在はIoT・AI・エネルギー・生体応用など、産業・医療・環境に貢献する学際的研究が進められています。
研究室の特徴
高度計測技術の充実:
テラヘルツ分光や光計測など、ナノレベルの構造やダイナミクスを可視化する装置群が完備。素材–デバイス間の学際的研究:
半導体材料の基礎から応用設計まで、一貫した研究開発が可能。産学連携・国際展開の推進:
外部資金・共同研究を積極的に活用し、国内外の研究機関・企業と連携。
アンケート結果(抜粋)
「PIとも相談しやすく、全体に風通しの良い雰囲気です。研究に対する熱意とスピード感があり、前向きな雰囲気があります。指導体制も整っており、シニア研究者からの助言や、論文執筆・プレゼンのサポート、本や論文へのアクセス補助も受けられる環境です。」
今回の総括
今回ご紹介した4つの研究室には、単なる技術力や研究テーマの先進性だけでなく、「研究者が成長し続けられる仕組み」が共通して存在していました。設備・資金・人間関係・自由度・将来支援、それぞれの要素がバランスよく整い、成果とキャリア形成の両立を実現する場として機能しています。
本記事は、現・元所属研究者からの推薦をもとに構成されています。今後、研究室へのインタビューやプロジェクト紹介などの追加取材も予定していますので、ぜひお見逃しのないよう、登録をよろしくお願いします。
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